大高郁子2003個展「シンプル」レポート
〜線画だけ、モノクロームだけ〜 4/4金曜日〜4/9水曜日 |
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今回の個展のテーマは「シンプル」。モノクロームの線画だけを展示しました。今迄私の個展は水彩とペン画がほぼ五分五分の割合でしたが、そのせいか、今ひとつピントがはっきりしないものだったので、今回は水彩画を一旦脇へ置いておき、ペン画だけを見てもらう事にしました。そしてどうせ「つけペン」で描くのだから、あえて色はつけず、そのままの黒を見てもらおうと思ったのです。 ■作品はこちら
そうは云っても、やはり個展としては、会場に入った時の雰囲気も考えなくてはなりません。私のペン画のサイズは大体ポストカードサイズで、それだけを並べても迫力不足。そこで、小さな原画を一旦パソコンに取り込み、プリンタで拡大出力するという方法を採りました。これには自宅のプリンタでは対応できないため、京都の画材屋の画箋堂さんにメールでデータを送り、スタッフの方に出力してもらいました。 紙の選定にも悩みましたが、これは前から肌合いが好きだったOKミューズガリバー(ムーサ株式会社)を何種類か取り寄せ、画箋堂で試しに何枚か出力した結果、テクスチャーの関係で一番スミの色が濃く見える紙(OKミューズガリバー/エクストラ/アイボリー135kg)を選びました。 画箋堂の大判プリンタはエプソンのもので、最大巾B0サイズまで出力することができるそうです。私の場合半切サイズと全紙サイズでしたが、一色だったこともあり、時間もそれほどかからず(一枚5分程)コストもそれほど高くありませんでした。 拡大出力した事で、小さな絵を描いた時の、力を抜いたままの、のびやかな線がそのまま生かされ、気持ち良い作品に仕上がったと思います。 一方、やはり原画を見てもらいたい、という気持ちはあります。そこで以前から好きだった漱石の「夢十夜」を描くことにしました。このお話はずっと前から頭の中には場面ごとの画があったので、イメージには困りませんでしたが、明治の具象を描くことに少し手間を取りました。服装、髪型、部屋の間取りなど、後から調べると微妙に違うものがあり、これは今回の失敗点でもあります。イメージを優先させて逃げるという方法もあるのですが、「挿絵」である以上、漱石が言葉で書いているものを、それと違う様に描くのはやはり避けるべきだったと思います。又、人物の「手」の表現が稚拙で、これは今後の課題になりそうです。 このお話を知らない方のため、漱石の復刻本(「四篇」/ほるぷ社刊)を机の上に出しておきましたが、中身よりも橋口五葉による美しい装幀の方に注目が集まってしまい、普通の文庫本にすればよかったと反省。 最後に気楽に描いたペン画の原画も見てもらおう、と云う事で並べた十六点の作品。実は搬入の前の晩に一気に描いたものです。何のテーマも設けず、思い付くままに描いたので玉石混合、実にバラバラな「群れ」です。またこの選に漏れた60枚ほどのラフなペン画を葉書サイズのクリアファイルに収め、机の上に置きました。このファイルが意外に好評で、皆さん熱心に見て下さいました。 期間中は本当にたくさんの方が来て下さいました。あまり時間が取れず、お一人お一人とゆっくりお話できなかったのがとても残念です。 今回たくさんの方にいろんなご意見を頂きましたが、励まされたり、凹んだり、そのどれもがしっかり私の栄養になりました。「道標」になる言葉もいくつか頂けて、また歩いてゆく勇気がわきました。中でも印象深かったのは、散歩がてら見に来て下さったギャラリーの大家さん(お名前すら存じ上げない方)の「原点のような絵ですね」の一言でした。 最後になりましたが、この個展に合わせて作った「日々のメモ」の印刷製本に御尽力いただいたトムズボックスさんや、HBの唐仁原さん、スタッフの久村さんと宿輪さんにも深く深く感謝いたします。 |
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大高郁子
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